コートールド美術館は毎週月曜日午後2時まで入場無料なのですが、週末の疲れと悪天候続きで、最近月曜日は家にいて出かけていませんでした。私の友人チャーリー氏が寄せて下さった解説以上の事はないと思いつつ、今日はここの学生による15分程のフォリーベルジェールのバーについてのトークがあるので、ちょっと重たい体を引きずって行ってみる事に。
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2010年に東京で展示された習作 |
しばらくすると、ここでPhDを取得中というアメリカ訛りの若いお嬢さんがやってきました。ほとんどの説明はチャーリー氏の解説の中に書かれているものでした。昨年春にこの階が改装になってから、この絵の説明書きに習作のうちのひとつが小さく載る様になり(上記写真)、X線写真によって習作の中のバーメイドの様に、このキャンバスにも当初バーメイドの顔の向きや手の位置が違っていた事が確認されたなどの説明がありました。
さてここで質問です。
下記に上げた3点の解釈を想像してみて下さい。
1.なぜ中央に立つバーメイドは美しい中にも物憂げな悲哀な表情をしているのか。
2.なぜバーメイドが絵全体からして大きく目立つ存在にあるのか。
3.なぜバーカウンターにあるボトルは商品であるはずなのに、どのボトルも空いておらず、それらを注ぎいれるグラスも描かれていないのか。
それらの答えになるヒントがチャーリー氏の解説にも含まれています。
フォリー・ベルジェールのバー 解説 1/3
フォリー・ベルジェールのバー 解説 2/3
フォリー・ベルジェールのバー 解説 3/3
更なるヒント;
1.この絵はマネが最期に描いた絵であること。
2.マネはサロン出展にとてもこだわっていたこと。
3.経済発展中のこの時代背景。
答えは下記に。
学生による解説は以下の様なものでした。
1.なぜ中央に立つバーメイドは美しい中にも物憂げな悲哀な表情をしているのか。
- 1879年ごろから発症していた病気が悪化する中でも制作を続け、苦痛に耐えながら若い頃を思い出し、現状に悲哀を表しているのではないか。
2.なぜバーメイドが絵全体からして大きく目立つ存在にあるのか。
- サロンに出展し入選する事に生涯拘っていたマネは、サロンでの絵の存在感を誇張する為にバーメイドを大きく描いたのではないか。
3.なぜバーカウンターにあるボトルは商品であるはずなのに、どのボトルも空いておらず、それらを注ぎいれるグラスも描かれていないのか。
- コモデティな時代背景の中で、売り物と見える商品のボトルを栓の開いていない状態で描き、それを注ぎ入れるグラスを描かない事によって、何でも手に入ると思われる時代背景を皮肉りつつ、マネがボトルにサインを残す事によって、時代を批判しつつも実は自分自身も商品のひとつであるという事を表したかったのではないか。
との事でした。
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コートールド美術館 - the Courtauld Gallery
http://www.courtauld.ac.uk/gallery/index.shtml
フォリー・ベルジェールのバー - A Bar at the Folies-Bergère
http://www.artandarchitecture.org.uk/images/gallery/dfa40992.html
参考図書
pen 2010 No.268 (阪急コミュミケーションズ)
マネとモダンパリ (三菱一号館美術館 他)
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