ラベル #32 フォリー・ベルジェールのバー の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
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2012年4月30日月曜日

フォリー・ベルジェールのバー


  コートールド美術館は毎週月曜日午後2時まで入場無料なのですが、週末の疲れと悪天候続きで、最近月曜日は家にいて出かけていませんでした。私の友人チャーリー氏が寄せて下さった解説以上の事はないと思いつつ、今日はここの学生による15分程のフォリーベルジェールのバーについてのトークがあるので、ちょっと重たい体を引きずって行ってみる事に。




2010年に東京で展示された習作
   しばらくすると、ここでPhDを取得中というアメリカ訛りの若いお嬢さんがやってきました。ほとんどの説明はチャーリー氏の解説の中に書かれているものでした。昨年春にこの階が改装になってから、この絵の説明書きに習作のうちのひとつが小さく載る様になり(上記写真)、X線写真によって習作の中のバーメイドの様に、このキャンバスにも当初バーメイドの顔の向きや手の位置が違っていた事が確認されたなどの説明がありました。


さてここで質問です。
下記に上げた3点の解釈を想像してみて下さい。

1.なぜ中央に立つバーメイドは美しい中にも物憂げな悲哀な表情をしているのか。
2.なぜバーメイドが絵全体からして大きく目立つ存在にあるのか。
3.なぜバーカウンターにあるボトルは商品であるはずなのに、どのボトルも空いておらず、それらを注ぎいれるグラスも描かれていないのか。

それらの答えになるヒントがチャーリー氏の解説にも含まれています。

フォリー・ベルジェールのバー 解説 1/3
フォリー・ベルジェールのバー 解説 2/3
フォリー・ベルジェールのバー 解説 3/3

更なるヒント;
1.この絵はマネが最期に描いた絵であること。
2.マネはサロン出展にとてもこだわっていたこと。
3.経済発展中のこの時代背景。
   
答えは下記に。


2011年7月29日金曜日

コートールド美術館 模様替え

    先日改装されたコートールド美術館(Courtauld Gallery)に行ってきました。4月にイギリスに到着した時には、改装の為に主に印象派・ポスト印象派の絵のある2階*は閉鎖されていたのですが、6月半ばに改装が終わり、保守的な私は果たしてどの様に変わってしまったのかしらと改装が終わってすぐに行く事が出来ませんでしたが、やっと心の準備が出来ました。
    2階*の入り口を入って右手奥に、一番奥の部屋の窓際にあった私のお気に入りのスラー「化粧する若い女」があり、右手の窓の間にはルノアールの「桟敷席」があったのですが、こちらも一番奥の部屋にあったゴッホの自画像があるのです。この時点で変化に耐えられそうになかった私は、先ずは「フォリー・ベルジェールのバー」があるはずの隣の部屋へ進み、フォリー・ベルジェールのバーの位置はほとんど変わっていない事に安心したものの、何かが違うと眺めてみると、壁の色が全く違うのです。以前は赤とオレンジの中間色の暖色で全体的に暖かいイメージだったのですが、今回は上部は白、下部は薄い水色なのです。何故かイギリスでは最近、壁の色は白が好まれている様で、家のリノベーションの番組を見ていても必ず壁の色は白なのです。以前の壁の色の方が絵画も映える気がしますが、保守的な私が言っているので聞き流して下さい。
    私が語るよりは見て頂く方がよろしいかと思い写真を撮りました。
    ちなみに祭日以外の月曜日午後2時までは普段6ポンドの入場料が無料になります。ちょっと立ち寄るには最適です。



    以前、私の知人、Charlie氏が「フォリー・ベルジェールのバー」についての解説を寄せてくださいました。
お時間のある方はこちらも合わせてご覧下さい。
フォリー・ベルジェールのバー解説 3/3


注釈 * - イギリスでは日本の1階部分をグランドフロア(ground floor)と呼ぶため、ここで言う2階はイギリスではファーストフロア(first floor)となります。
  

2011年1月19日水曜日

フォリー・ベルジェールのバー解説 人気上昇中


      最近、このブログの右側に「過去一週間の人気ブログ」(popular posts for the last 7 days)という機能を付けてみました。昨年4月に、ビールの肴になりそうな読み物として、私の知人Charlie氏が「フォリー・ベルジェールのバー」(A bar at the Folies-Bergere)(写真右)についての解説を寄せて下さったのですが、それがいつも上位を占めています。Charlie氏がお忙しい中、寄せて下さった解説が皆さんに読まれているという事は、このブログのオーナーとしてはとても嬉しく思いますが、その反面、ビールのブログであるのに、肝心なビールの記事に注目が集まらないという事は?と、ちょっと複雑です。


Charlie氏の解説はこちらから。
フォリー・ベルジェールのバー 1/3

2010年10月2日土曜日

A bar at the Folies-Bergere @ Courtauld Gallery


  あまり時間はなかったのですがコートールド美術館へ。お目当ては以前にCharlie氏がこのブログに解説を書いて下さった、マネ作の「フォリー・ベルジェールのバー」です。
館内が薄暗くなるほど外は物凄い雨でうまく写真に写りませんでしたが、憂いのある目をしたバーメイドを目の前に、この絵の中に描かれたたくさんの物事・出来事を眺めつつ想像しつつ、バスペールエールの姿を確認しつつ、再会を楽しんで来ました。

気のせいか、全体の色合いが薄くなっている様な。バーメイドの黒い衣装の部分も以前よりビヒが大きく多くなっている様な気もします。劣化は間逃れないにしても、素敵なものが朽ちていく事は淋しくもあります。








    Charlie氏の解説の中にもありましたが、数年前にこの絵のバラの絵の部分を切り出したフリッジマグネットが売っていました。その時はいつでも買えるだろうと思い買わずに帰ったのですが、今回行ってみたら既に販売されなくなっていました、バラ愛好家の私としては不覚でした。(涙)


    Charlie氏の解説をまだ読んでいないという方の為に、下記にリンクをはりました。とても素敵な解説です。


    文中にもありますが、もう一枚の絵についてもリクエストがあれば書いて下さるという事ですので、ご興味のある方は下記メールにてご一報お願いします。
Email to; elizabeth.shikibu@gmail.com

解説 1/3
解説 2/3
解説 3/3

16:00 Saturday 2nd October 2010 in the UK

2010年4月28日水曜日

フォリー・ベルジェールのバー 続き

もうそろろそこの美少女の顔を眺める事も、ビールの様におなかいっぱいになって来たと仰られるかも知れませんが、先日友人が素敵なサイトを発見して下さいましたので、まだおなかいっぱいになっていない方はぜひご覧になってみて下さい。
名画のPC壁紙のサイトですが、絵画の解説も書かれています。見る人が100人いれば、考え方も100通りですね。
http://stephan.mods.jp/kabegami/kako/A_Bar.html

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2010年4月18日日曜日

フォリー・ベルジェールのバー 解説 3/3



   二夜連続でCharlie氏の「フォリー・ベルジェールのバー」の解説をご紹介致しましたが、こちらで最後となります。


   まだご覧になっていない方は、
まずはこちらを↓ご覧下さい。

フォリー・ベルジェールのバー 解説 1/3
フォリー・ベルジェールのバー 解説 2/3

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コートールド・インスティチュート美術館

フォリー・ベルジェールのバー」が飾られているコートールド・インスティチュート美術館は、英国国立美術館正門から左手に出て、ストランド通りを歩きほど近い立地にあります。国立美術館から近いということ以外にも、訪問すべきだという素敵な理由が幾つかあります。一つは、大きくないということです。国立美術館は所蔵する絵画の量が多く、勿論それは素晴らしいことですが、あまりの情報量の多さに、見ているうちに疲労感が増してしまいます。これに対して、程よい大きさで良質の絵画を有する美術館があります。それらは総じて裕福な個人のコレクターによるもので、鑑識眼に優れ、秀でたセンスによって集められた絵には一定の統一感があり、程よい数の絵は見る者を疲れさせません。さらには時間をかけて、何度も同じ絵を訪れ自分の印象を確かめることができます。米国ニューヨークでは、メトロポリタン美術館に近いフリック美術館にも同様の趣が感じられます。

コートールド・インスティチュート美術館の創始者であるサミュエル・コートールドは、フランスからイギリスへ移住してきた豊かな家系に生まれ、絹織物の会社を興し大きな成功を収めました。印象派と後期印象派の良作を中心に質の高いコレクションを有しており、サミュエル・コートールドの高い鑑識眼を証明するには充分な内容となっています。ここまでお話ししてきた「フォリー・ベルジェールのバー」(1882)のほかにもマネの代表作の一つである「草上の昼食」(1862)(但し、ルーブルのものとは異なり若干小ぶりでモデルも異なる)、セザンヌの「トランプをする男たち」(1890年代に同じモチーフで5点描かれたうちの一点)、「化粧をする若い女」(1889)など多くのスーラの作品、ゴッホ、ゴーギャンと、手狭なロンドン大学周辺から移設されてきたとはいえ、いまだ広いとは言えない展示会場に余すところなく名作が展示されています。サミュエル・コートールド自身、熱心な絵画の研究者でしたが、1931年にこれらの絵はロンドン大学に付属する財団の管理するところとなり、1958年から美術館として公開されてきました。

私がこの美術館を愛するもう一つの理由は、飾られた絵と見る自分との距離が近いことです。オルセーに移設される前の印象派美術館を訪れたのは私がまだ学生の頃でしたが、何よりも驚いたのは人類が誇るべき掛けがえのない名画が、個人の邸宅を思わせるほど良い大きさの部屋の中に手に届く距離で無防備に置かれていることです。見る者への強い信頼感や期待とともに、絵とは本来、このようにプライベートな距離と空間のもとで鑑賞されるべきものであるということが解りました。ここ、コートールド・インスティチュート美術館も、時間を選ばなくとも、そう混んでいるわけではありません。望むらくは、もう少し低い位置にこの絵を掲げて欲しいと思うことはありますが、それでも誰に邪魔されることもなく、マネが最晩年の思いを託した虚空を眺めるバーメイドとの二人だけの贅沢な時間を過ごすことができます。

前回、私が訪れたのは冬のことでした。この美術館がある灰色の石造りのサマーセット・ハウスの中庭には特設のスケート場が設けられており、美術館に向かう私の横を、毛糸の帽子をかぶった母と娘が白い息を吐きながら連れ立って歩いていきました。


(2010年4月11日)

= 参考文献 =
Manet Face to Face, Coutrauld Institute of Art
印象派美術館 小学館
近代絵画史 高階秀爾 中公新書
フランス絵画史 高階秀爾 講談社学術文庫
美術館へ行こう 長谷川智恵子 求龍堂
世界美術館巡りの旅 長谷川智恵子 求龍堂
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      いかがでしたでしょうか?こうしてCharlie氏から頂いた解説を読んで、改めてこの絵を眺めてみると、「菫の花束をつけたベルト・モリゾ」を始めとするベルト・モリゾの肖像やメリー・ローランをモデルにした「秋」、または「プラム」などの様に、女性の一瞬の美しさや憂いをこの絵の中でも表現し、「シャクヤクと剪定ばさみ」などの花ものや、「レモン」と「4個のリンゴ」など、マネが得意とされた静物画もこの絵の中に取り入れられている事が伺えます。さらにマネは何とかサロンで高い評価を得ようとしていたのにも関わらず、なかなかマネの思う評価を与えなかったブルジョアジーの人々を「チュイルリー公園の音楽会」の遠景の様な描き方でこの絵の背景として描いるのではという気分にもなり、もうひとつ想像するならば、バーメイドの右手にある腕輪は「オランピア」のモデルの右手に付けられている腕輪にも見える気がします。
本当にこの「フォリー・ベルジェールのバー」は、たくさんの要素が含まれていて、まさにマネの最期の作品として、マネが全てをつぎ込んだ作品であったのかもしれないと思いを馳せていると、いつのまにか夜も更けてしまいそうです。

  最後に、お忙しいにもかかわらず、私のブログにお付き合い頂いたCharlie氏には感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございました。

   この絵を眺めていて新たに発見した要素や、ご感想・ご意見などをお寄せ下さい。お待ち致しております。
Email to: elizabeth.shikibu@gmail.com


 

2010年4月17日土曜日

フォリー・ベルジェールのバー 解説 2/3



    昨日に引き続き私の知人Charlie氏による「フォリー・ベルジェールのバー」の解説です。


    昨日の解説をまだ読んでいらっしゃらない方は、こちらを↓先にご覧下さい。

フォリー・ベルジェールのバー 解説 1/3

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コラージュ的構成

この絵は、長い時間見ていても飽きることのない絵です。この絵があるコートールド・インスティチュート美術館の二階の一室には、絵の正面に木で出来た長椅子が用意されています。以前はその椅子の上に解説書も置かれていましたが、それはいつの間にか撤去されてしまいました。絵は部屋の中央、窓の反対側の壁の高い位置に掲げられて、椅子に座ってゆっくり眺められるようになっています。

バーメイドから眼を転ずると、近景であるバーのカウンターの上には、向かって左からスコッチ・ウィスキーのボトル(ラベルにマネの署名と制作年が描かれている)、ワインやシャンパンのボトル、また、それに挟まれてバス・ペール・エールの特徴的な赤いトライアングルのラベルも見えます。また、バーメイドの右手には薔薇が挿されたグラス、果物が盛られたガラスの台が描かれ、その右手にはアルコール類のボトルが絵の縁まで並んでいます。

遠景は全面鏡となっており、カウンターに置かれたボトルの一部が映り込んでいますが、舞台に見入っている観客や、恐らくは会話を楽しんでいるであろう人々が、荒いタッチで描かれています。この絵の舞台は、カフェ・コンセールと呼ばれる、出し物を見ながらお酒を楽しめるお店だと申し上げましたが、絵の左上には軽業を演じているであろう演技者の足だけがブランコとともに、申し訳程度に描写されています。また、遠景右側の大半には、このバーメイドが男性客と話している様子が映り込む形で表現されています。

カウンター上に描き込まれた様々な静物は、それだけを切り出しても充分に絵として成立するほど丁寧に描かれています。96センチ×130センチの大きさのキャンバスに描かれているこの絵を眺める人は、これらの静物ひとつひとつをあたかも一つの絵のように、視線を移動させていくことになります。特に薔薇とグラスの表現は素晴らしく、まるで、この絵のもう一人の主人公のようです。この部分だけを切り出したマグネットがこの美術館で売られています。勢いのあるタッチで描かれた屈託のなく咲き誇る薔薇とグラスの冴えた輝きは、物憂げなバーメイド表情と好対照をなしています。この絵を描いているころから翌年に亡くなるまでの間に、マネは療養先の庭に咲く花や、友人から送られた花や果物を描いた小品のシリーズを残しています。病に伏せたマネにとって、このような静物を描くことには特別の思いがあったのでしょう。マネのガラス器に挿された花に対する愛情が、そこだけスポットライトに照らされて浮かび上がってくるように思われます。

また、良く見ると、その薔薇を挿したグラスとそのとなりの果物を乗せた食台は厳密には同一の視点から描かれたものではないように見えます。

遠景に目を転ずると、鏡の汚れもあり、観客たちは荒いタッチで描かれ、これもまた別の絵のようです。さらには遠景右側の男性客と話すバーメイドの後ろ姿は、正面にあるバーメイドの正確な後ろ姿ですらありません。これはこの絵画の一つの謎と言われてきました。前述した他の習作やこの絵のエックス線写真像をみると、恐らく、この後姿の像の方が当初描かれたモチーフであり、その後、前を向いているバーメイドは絵を見る人に対して正対させましたが、鏡に映り込む姿の形状は概ねそのままとし、絵の右端方向に移動させたものと推測されます。

このような各所に散らばる多くのモチーフやそれぞれのタッチの違いから、絵全体がコラージュ的な構成となっており、絵全体に複雑性・複層性を与えるとともに、物語を紡ぎだしています。このような味わいが見ている者にじわじわと伝わってくることも、私がこの絵からなかなか立ち去ることが出来ない理由となっています。

to be continued ....

フォリー・ベルジェールのバー 解説 3/3


 

2010年4月16日金曜日

フォリー・ベルジェールのバー 解説 1/3


  フォリー・ベルジェールのバーについて先日少し書きましたが、私の知人、Charlie氏がその絵の解説を書いて下さいました。ありがとうございます。絵画に関して知識のない私向けに、時代背景も含め、丁寧にご説明下さっています。3部構成になっていますので、今日から三夜連続3回に分けて紹介させて頂こうと思います。

  あまり絵にご興味のない方でもぜひビール片手にご覧になってみて下さい。この解説を読んだ後に再度絵を眺めると、色々なものが見えてきて、本当に素敵な絵である事を再認識させられます。文中の関連事項にはご参考までにリンクをはりました。

ぜひ感想をお聞かせ下さい。
まれにコメントボタンがうまく作動しないときがあります。その際はEメール頂ければ幸いです。
Email to: elizabeth.shikibu@gmail.com

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「フォリー・ベルジェールのバー」

  「フォリー・ベルジェールのバー」は、ロンドンを訪れる時に必ず再会する事を決めている二枚の絵のうちの一枚です。自分が何故この絵にここまで魅かれるのか、「バーメイド」、「コラージュ的構成」、この絵が飾られている「コートールド・インスティチュート美術館」という三部構成でお伝えしたいと思います。お時間のある方は少しお付き合いをいただけますでしょうか。

バーメイド

この絵の中央に描かれているバーメイド(女性のバーテンダー)の物憂げな眼差しに、吸い込まれる様な気持ちになるのは自分だけではないでしょう。絵がお好きな方はご存知の通り、この絵を描いたエドゥアール・マネ(Édouard Manet、1832-1883)は、モネ(1840-1926)、ルノワール(1841-1919)、あるいは、ドガ(1834-1917)、セザンヌ(1839-1906)らとともに、19世紀後半から20世紀初頭にかけて広がった、それまでの伝統的な絵画の在り方に反旗を翻した「印象派」と呼ばれる潮流を代表する画家の一人です。この絵は、マネが亡くなる直前の1882年にかけて描かれました。既に病気のために歩くことすらままならない有様で、この絵を描くためにアトリエにセットを組み、モデルが呼び込まれたそうです。自分の余命が長くはないことを意識していた彼は、この絵が自分にとって最後の絵になるかもしれないとの思いがありました。マネはこの絵を描き上げた翌年、1883年にパリで亡くなりました。

この絵の舞台は、カフェ・コンセールと呼ばれる、出し物を見ながらお酒を楽しめるお店です。そこのバーが描かれています。19世紀の後半にパリで広がったこの種のお店は、しばしばマネの絵の題材とされてきました。絵からも一種の社交場といった雰囲気が伝わってきます。盛装に身を包んだ人々でごった返し、賑やかな雰囲気の中、観客席の最前列にはオペラ・グラスを掲げ、出し物に見入る女性の姿も見えます。

しかし、マネが主題として描こうとしたのは、その様な華やかな光景ではなく、むしろ、一人沈黙するバーメイドでした。マネは、この絵の下絵として習作を残していますが、そこに描かれた女性は、もっと艶めかしく、そして絵の正面を向いていません。マネはこのバーメイドを意図的に絵を見る人たちに正対させるとともに、素朴で物憂げな表情を与え、描き込みました。特に髪の毛や襟周りのレースは丁寧に描かれています。

このバーメイドが身に付けている給仕服は、マネが好んだ黒色です。しかし、それは、「笛を吹く少年」(1866)や「アトリエの昼食」(1868)、あるいは「エミール・ゾラの肖像」(1868)に見られる浮世絵の影響を受けたと言われる漆黒の平面ではなく、明るいトーンの白色によって陰影を与えられた生き物として描かれています。強いて言えば、「菫の花束を付けたベルト・モリゾ」(1872)の着衣に用いられた画法に近いものが感じられます。モリゾは印象派を代表する女性画家の一人ですが、画家として9歳年上のマネの影響を受けるとともに、この絵が描かれた2年後にはマネの弟のウジェーヌと結婚するなど、マネと近しい関係にありました。この絵のモリゾの表情には陰影が明確に与えられ、「マネらしくない」と言われているようですが、こちらの「フォリー・ベルジェールのバー」のバーメイドの表情にもきちんとした陰影が、より詳細なタッチで描かれています。

マネが自分の死を意識した絵の中で、「マネらしくない」画法を用いたことに、マネの思いが垣間見られるように感じられます。「草上の昼食」(1863)や「オランピア」(1863)などによって、スキャンダラスな画家というレッテルを貼られ、また、平面的な表現に革命家という称号を贈られたマネでしたが、そんな彼が、その時そのままの感動を飾らない言葉で語りかけてくることに、少し驚きを感じながら素直に共鳴することができます。恐らく、モリゾを描いた時も、そのままの彼女を残したいという気持ちが、絵の構成表現に関する意識を上回ったのではないでしょうか。その切実さが、私の心を揺さぶるのだと思っています。

to be continued ....

フォリー・ベルジェールのバー 解説 2/3

 

2010年2月23日火曜日

フォリー・ベルジェールのバー by エドゥアール・マネ

     2005年1月20日6:22pm、翌日に上司のサンフランシスコ出張を控え、その日の仕事も追い込みに差し掛かった所、親愛なる大の仲良しの飲み友達からメール。メールにはメッセージはなく、リンクがひとつ。スパムかしら?と思いながら(笑)貼られていたリンクを開けてみると、そこにはあどけない美しい女性の姿と共にBass Pale Aleのボトルがバーカウンターに。既に夕方の時間な上に、私がビール調査員である事を察して、親愛なる大の仲良しの飲み友達からのお誘いの意と勝手に解釈。その時、初めてこの絵と会いました。
    その年の秋に渡英した際、この絵が展示されているロンドンのストランドという通り沿いのサマセット・ハウス内のコートールド美術館へ。現物は思いのほか大きく、描かれているバス ペールエールの大きさは、実物のバス ペールエールの大きさより大きいほど。親愛なる大の仲良しの飲み友達が言う様に、眺めれば眺めるほど色々なものが見えてくる。この絵を肴に一夜を過ごせたらどんなに幸せなのだろうかと思いました。

皆さんもぜひロンドンへご旅行の際はご覧になってみて下さい。